2018年5月27日日曜日

韓国映画『弁護人』(2013)

『弁護人』[3]をみた。よい。これがほんの少し前でしかない80年代のお隣での話とはな、まさに「惰眠を貪っているあいだに」という表現がしっくりくる本邦のありさまだ。本邦に巣喰う「日本を取り戻す」連中が取り戻したい世界というのがまさにこの話が罷り通る世界なので、いずれ来る本邦の未来の予習に最適じゃなかろうか。ということでよい子のみんなも悪い子のみんなにもおすすめだ。心が汚れたタイプのネトウヨが見ると最後にはカタルシスを得られるという仕掛けになっているので、ヤメ検だかモト検の類いにとってはこの話も抱腹絶倒の喜劇に映るかもな。あるいは主人公のセリフが眩しすぎて目が潰れたりするのかもしれん。それはそれで見物してみたくある。

いずれにせよ、近代的な人権概念 (例えば無罪推定の原則とか拷問の禁止とか長期勾留の禁止とかの、刑事訴訟上の原則) を獲得していない人間にはおそらく理解不可能なストーリーなのでその方々にとっては見るだけ無駄だろうと思います。とはいえそういった人で大半を占めるのがこの本邦でした。なんてったって、本邦の刑事司法が中世だという国連拷問禁止委員会での指摘に対して本邦の人権人道担当大使が答えたセリフは「シャラップ!」ですからね [1]。ははは。なので、残念なことですが本邦の多くの人(さっきの上田秀明大使ふくめて)は、この映画を見ても何がおもしろいのかわからないしつまらないでしょう。

ちなみにこの映画で問題とされた人権侵害の一つに、公判前までの勾留期間が2ヶ月もの長期間だったことが挙げられる。最近保釈された籠池夫妻は10ヶ月でしたね[2]。地獄にようこそ。

ネトウヨばかり法学部に送り込んできたこの国でこういう弁護士が希少なのは無理もない話ですわね。まあ希少な方にがんばってもらうしかないのでその方たちには期待しています。この話だって主人公はもとから闘士だったわけではないというのがおもしろいところなので、現実でもこのようにゼニモウケ第一の人がある日突然転向するという可能性に期待してみたくはある。まあそんなのを悠長に待ってられるほどの状況でもなくなりつつありそうだけど。

※追記(2018-05-30): 亀石弁護士によると10ヶ月は長くないか、またはよくある話なのだそうだ。「日本」という名前のついた地獄にようこそ。

References

  1. ^ 国連委会合で「黙れ!」、日本の人権人道大使に批判. AFPBB News, 2013年6月13日. 閲覧: 2018年5月27日.
  2. ^ Moritomo chief Yasunori Kagoike freed on bail, dares Abe to ‘tell the truth’ about Osaka land deal. The Japan Times, May 25, 2018. 閲覧: 2018年5月27日.
  3. ^ ヤン, ウソク. (監督). (2016). 弁護人(변호인/The Attorney) [Motion picture on DVD]. 韓国: Next Entertainment World.

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