2020年3月27日金曜日

PCR検査の偽陽性率が20%と主張する嘘つき飯田泰之

以下に示すのは、以前に紹介した飯田泰之のツイートである。彼は、百分率の計算なら明治大学政治経済学部准教授でもできるぞ!ということを示したがっているのでは(恐らく)ない。彼は馬鹿なのではない(結論において示されるように、もしかすると馬鹿なのかもしれないが)。本人の自覚としてはおそらくそうではなく、イデオロギーが事実に優先するタイプの人間なんだろう。もちろん活動家だからといって問題はないのだが、嘘をつくとなると別問題である。

孫正義に迫るべきは、これを機に80年代なみの累進課税へ所得税を戻す事への同意であって、簡易PCR検査キットはそのおまけでよいことは以前のエントリで述べた。従って俺個人としては彼の簡易検査キットがクソ味噌に否定されようが人種差別的動機によるものでなければほっておけばよいと思うのである。しかし、飯田泰之の簡易検査キットへの批判はPCR検査への原理的な批判であるが、その根拠に虚偽の事実を用いており、見過ごすことは許されない。PCR検査が原理的には特異度100%であり、飯田泰之の言う偽陽性率が20%だと特異度は80%であり、現実に合わない。したがって飯田泰之は嘘つきであり、彼はその嘘によりPCR検査が無駄であるという世論形成へ加担したことになる。
彼の話した前提で計算を行ってみる。計算自体は条件付き確率とベイズの定理を適用するだけであり、高校の範囲でしかない。 検査による陽性である事象を \(T\) とおき、真に罹患している事象を \(D\) とおき、検査が陽性でない事象は \(\neg T\), 罹患していない事象は \(\neg D\) と表す。このとき陽性率\(P(T)\), 有病率\(P(D)\), 偽陽性率 \(P(T|\neg D)\), 特異度 \(P(\neg T|\neg D)\) と表せる。また、以下に示すように、\[ P(T|\neg D) + P(\neg T|\neg D) = \frac{P(T\land \neg D) + P(\neg T\land \neg D)}{P(\neg D)}= \frac{P((T\lor\neg T)\land \neg D)}{P(\neg D)}= \frac{P( \neg D)}{P(\neg D)}= 1\] であり、偽陽性率と特異度の和は常に1である。問題なのは、彼はこれを理解していないと言うことではなく(そんなことはつゆも思わない)、彼が偽陽性率を20%であると主張したことにより同時に特異度が80%であると主張したことになるわけである。そしてそれは現実に反している。

念のために、彼が3月10日「ニュース女子」で話した内容も引いておく。
検査をすると半分の確率で偽陽性が出て10,000人検査するとその10,000人分の陽性と出た人の殆どが実際には罹患してない。いたずらに増やしてしまって全員隔離or入院させたりすると本当の重症者に対応できなくなる
彼のこのニュース女子での主張を以下の様に解釈する。「10,000人検査すると10,000人全員陽性になる」 のであれば偽陰性率 \(P(\neg T|D)\) と特異度 \(P(\neg T|\neg D)\)がどちらも0であるという主張になり、「半分の確率で偽陽性」と辻褄が合わないので、おそらくそういう話ではない。「\(n\)人検査すると陽性10,000人のうち半分が偽陽性」という話だろうから、陽性的中率(positive predictive value, PPV)は10,000人が検査により陽性が出た年、そのうち5000人が真の陽性なので的中率は2分の1であるから、 \[P(D|T)= P(\neg D|T)= \frac{5000}{10000}=\frac12\]と解釈できる。以下の押川氏の指摘:
より、 韓国KCDCの実施結果から\(P(T)= \frac{107}{12688}\approx 0.008=\frac1{125}\) とする(3月14日時点)。ここでは有効数字1桁として計算する。これを両辺にかけて
 \[P(D\land T)= P(\neg D\land T)= \frac{1}{250}\]
ここで3月14日時点での韓国の陽性率は0.8%, 真の陽性率は当然それと等しいかさらに小さいので\(P(D)\leq P(T)=\frac{1}{125}\) である。したがって \(P(\neg D)=1-P(D)>1-P(T)=\frac{124}{125}\) より、感度は
\[P(T|D)=\frac{P(T\land D)}{P(D)}\geq\frac{P(T\land D)}{P(T)}=\frac{1}{250}\times125=0.5,\] つまり感度50%以上、偽陽性率は \[ P(T|\neg D)= \frac{P(T\land \neg D)}{P(\neg D)}<\frac1{250}\times\frac{125}{124}=\frac1{248}=0.004,\]
つまり偽陽性率0.4%未満であり、したがって特異度\[P(\neg T|\neg D) = 1 - P(T|\neg D) > 1-0.004= 99.6\%\approx 100\%\] 以上ということになる。飯田の仮定に基づくと偽陽性率は20%にはならず、特異度は80%ではなく100%となる。

したがって、少なくともこの結果は飯田の仮定に基づいて算出した偽陽性率でさえ、飯田の仮定した偽陽性率に矛盾している、ということが示された。ここからわかることは、飯田泰之は嘘つきであるだけでなく整合性のある嘘をつくことができない馬鹿である可能性が示されたことになる。

※2020/04/04 追記

この善川氏の言う通りだとすると、この狂人界隈には飯田泰之も含まれるだろう。むしろこの嘘つきを入れずに誰を入れると言うのか。見た目通りの狂人である上念司に比べると一見チャラ男っぽく見える飯田であるが、結局のところ上念と同じ類である。サイコパス村中と同じだけの罪を問うべきかはともかく、このテレビ芸人を決して許すな。

※2020/04/27追記

百分率の計算の誤りを訂正した。結論に変更の必要は生じなかったので安堵した。 下のコロラド博士のツイートに関連して、 勘のいい高校生であればこれらの嘘を見破れるだろうとは思う(俺は勘のいい高校生ではなかったが)。
飯田泰之が「適当な知性」かは知らないが、この下の方の怒りは正当なものなので、デタラメによってPCR検査の意義を否定する御用デマゴーグは下のような現場の/に近い医師たちの業務を妨害している可能性に思い至るべきだろう。

※2020/06/03追記

有効数字を1桁として明示的に取り扱うようにやり直した。結果は変わらないのであるが、これでようやく高校化学の水準に上がったと言える。有理数として扱うことが可能なので最後に計算する桁を自由にいじるだけで有効数字の精度を変えられるのであるが、今度有効数字3桁としてやってみる予定である。
岩田健太郎や鎌江伊佐夫のような国策PAデマゴーグ達の流している偽陽性デマとは、仮の値として特異度を99%とか90%に設定して擬陽性の患者を机上で増やしてみせる児戯に等しい所業であるが、それらデマゴーグの中でも飯田泰之の議論が最低の水準かつ最悪の架空損害見積もり(略して最低最悪)という地位は揺るがない。なお、以下のツイートは最新の事例からの計算例で、特に結論に変更または訂正の必要はなさそうだ。ここで示している例は単純ではないようだが、高校の範囲で検算できることは一つの重要な技能なので示しておきたかった。



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