孫正義に迫るべきは、これを機に80年代なみの累進課税へ所得税を戻す事への同意であって、簡易PCR検査キットはそのおまけでよいことは以前のエントリで述べた。従って俺個人としては彼の簡易検査キットがクソ味噌に否定されようが人種差別的動機によるものでなければほっておけばよいと思うのである。しかし、飯田泰之の簡易検査キットへの批判はPCR検査への原理的な批判であるが、その根拠に虚偽の事実を用いており、見過ごすことは許されない。PCR検査が原理的には特異度100%であり、飯田泰之の言う偽陽性率が20%だと特異度は80%であり、現実に合わない。したがって飯田泰之は嘘つきであり、彼はその嘘によりPCR検査が無駄であるという世論形成へ加担したことになる。
彼の話した前提で計算を行ってみる。計算自体は条件付き確率とベイズの定理を適用するだけであり、高校の範囲でしかない。 検査による陽性である事象を \(T\) とおき、真に罹患している事象を \(D\) とおき、検査が陽性でない事象は \(\neg T\), 罹患していない事象は \(\neg D\) と表す。このとき陽性率\(P(T)\), 有病率\(P(D)\), 偽陽性率 \(P(T|\neg D)\), 特異度 \(P(\neg T|\neg D)\) と表せる。また、以下に示すように、\[ P(T|\neg D) + P(\neg T|\neg D) = \frac{P(T\land \neg D) + P(\neg T\land \neg D)}{P(\neg D)}= \frac{P((T\lor\neg T)\land \neg D)}{P(\neg D)}= \frac{P( \neg D)}{P(\neg D)}= 1\] であり、偽陽性率と特異度の和は常に1である。問題なのは、彼はこれを理解していないと言うことではなく(そんなことはつゆも思わない)、彼が偽陽性率を20%であると主張したことにより同時に特異度が80%であると主張したことになるわけである。そしてそれは現実に反している。誤りは早めに撤回するのが正解.— 飯田泰之 (@iida_yasuyuki) March 11, 2020
現実の感染率が低いなかで偽陽性率が高い検査をすると,非感染者に膨大な医療資源をとられることになる.
仮説例として偽陽性率が20%あるなかで100万人検査すると,20万人近い非感染者に治療?を行わざるを得なくなる https://t.co/GKIB9ireRx
念のために、彼が3月10日「ニュース女子」で話した内容も引いておく。
検査をすると半分の確率で偽陽性が出て10,000人検査するとその10,000人分の陽性と出た人の殆どが実際には罹患してない。いたずらに増やしてしまって全員隔離or入院させたりすると本当の重症者に対応できなくなる彼のこのニュース女子での主張を以下の様に解釈する。「10,000人検査すると10,000人全員陽性になる」 のであれば偽陰性率 \(P(\neg T|D)\) と特異度 \(P(\neg T|\neg D)\)がどちらも0であるという主張になり、「半分の確率で偽陽性」と辻褄が合わないので、おそらくそういう話ではない。「\(n\)人検査すると陽性10,000人のうち半分が偽陽性」という話だろうから、陽性的中率(positive predictive value, PPV)は10,000人が検査により陽性が出た年、そのうち5000人が真の陽性なので的中率は2分の1であるから、 \[P(D|T)= P(\neg D|T)= \frac{5000}{10000}=\frac12\]と解釈できる。以下の押川氏の指摘:
より、 韓国KCDCの実施結果から\(P(T)= \frac{107}{12688}\approx 0.008=\frac1{125}\) とする(3月14日時点)。ここでは有効数字1桁として計算する。これを両辺にかけて根拠を何も示さず、PCR検査の特異度を勝手に90%と仮定して議論しただけ(その議論が正当化どうかも問題ですが、それは別にして)ですね。— Masaki Oshikawa (押川 正毅) (@MasakiOshikawa) March 15, 2020
現実に韓国ではCOVID-19のPCR検査で陽性率0.8%(偽陽性率はそれ未満)を達成しています。専門家だろうが誰だろうが、現実に立脚しない議論には意味がありません。 https://t.co/RdQAN9oNc6 pic.twitter.com/wYEUOtrKrT
\[P(D\land T)= P(\neg D\land T)= \frac{1}{250}\]
ここで3月14日時点での韓国の陽性率は0.8%, 真の陽性率は当然それと等しいかさらに小さいので\(P(D)\leq P(T)=\frac{1}{125}\) である。したがって \(P(\neg D)=1-P(D)>1-P(T)=\frac{124}{125}\) より、感度は
\[P(T|D)=\frac{P(T\land D)}{P(D)}\geq\frac{P(T\land D)}{P(T)}=\frac{1}{250}\times125=0.5,\] つまり感度50%以上、偽陽性率は \[ P(T|\neg D)= \frac{P(T\land \neg D)}{P(\neg D)}<\frac1{250}\times\frac{125}{124}=\frac1{248}=0.004,\]
つまり偽陽性率0.4%未満であり、したがって特異度\[P(\neg T|\neg D) = 1 - P(T|\neg D) > 1-0.004= 99.6\%\approx 100\%\] 以上ということになる。飯田の仮定に基づくと偽陽性率は20%にはならず、特異度は80%ではなく100%となる。
したがって、少なくともこの結果は飯田の仮定に基づいて算出した偽陽性率でさえ、飯田の仮定した偽陽性率に矛盾している、ということが示された。ここからわかることは、飯田泰之は嘘つきであるだけでなく整合性のある嘘をつくことができない馬鹿である可能性が示されたことになる。
※2020/04/04 追記
この善川氏の言う通りだとすると、この狂人界隈には飯田泰之も含まれるだろう。むしろこの嘘つきを入れずに誰を入れると言うのか。見た目通りの狂人である上念司に比べると一見チャラ男っぽく見える飯田であるが、結局のところ上念と同じ類である。サイコパス村中と同じだけの罪を問うべきかはともかく、このテレビ芸人を決して許すな。新型コロナのPCR検査を無償で提供しようとした孫正義氏に対し、上念司氏が食い下がるようにやめてくれと言ってましたが、頭がおかしいの極みでしたね。あの界隈は狂人だらけです。— 善川チャーリ (@GoodBye_Nuclear) April 4, 2020
※2020/04/27追記
百分率の計算の誤りを訂正した。結論に変更の必要は生じなかったので安堵した。 下のコロラド博士のツイートに関連して、 勘のいい高校生であればこれらの嘘を見破れるだろうとは思う(俺は勘のいい高校生ではなかったが)。飯田泰之が「適当な知性」かは知らないが、この下の方の怒りは正当なものなので、デタラメによってPCR検査の意義を否定する御用デマゴーグは下のような現場の/に近い医師たちの業務を妨害している可能性に思い至るべきだろう。岩田氏は、PCR検査の特異度を有効数値二桁で表して99%としているが、ここが根本的に誤り。— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) April 26, 2020
99.95%も99.995%も有効数値二桁ならば100%。
科学的思考を行う訓練を受けていないからこういう高校生でも知っている基本中の基本を誤ってどや顔している。
欺される方も欺される方で、この程度気がつけよ。
PCRの特異度が99%とかベイズの定理がとか適当なこと言うのやめてくれと言いたいが、もうどうしようもないよねとは思う。適当な知性の人が適当な知性を見せびらかすという点で、COVID19は最高のエンターテイメントになっているので止めようがない。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) April 25, 2020
※2020/06/03追記
有効数字を1桁として明示的に取り扱うようにやり直した。結果は変わらないのであるが、これでようやく高校化学の水準に上がったと言える。有理数として扱うことが可能なので最後に計算する桁を自由にいじるだけで有効数字の精度を変えられるのであるが、今度有効数字3桁としてやってみる予定である。岩田健太郎や鎌江伊佐夫のような国策PAデマゴーグ達の流している偽陽性デマとは、仮の値として特異度を99%とか90%に設定して擬陽性の患者を机上で増やしてみせる児戯に等しい所業であるが、それらデマゴーグの中でも飯田泰之の議論が最低の水準かつ最悪の架空損害見積もり(略して最低最悪)という地位は揺るがない。なお、以下のツイートは最新の事例からの計算例で、特に結論に変更または訂正の必要はなさそうだ。ここで示している例は単純ではないようだが、高校の範囲で検算できることは一つの重要な技能なので示しておきたかった。
日本では、PCR検査は精度が低く、高確率で偽陽性偽陰性が発生する、と盛んに喧伝されています。— suna (@sunasaji) June 2, 2020
しかし実際は、PCR検査は特異度が非常に高く、感度も高い検査です。
それはなぜか、原理から説明してみることにします。
ニュージーランドでは5月に10万件以上検査して、陽性者0.025%未満でした。仮に全員が偽陽性であったとしても、特異度は99.97%以上となります。実際には全員が偽陽性であることはないと思われるので、特異度は更に高くなることになります。https://t.co/Xv4nFhLLrj— suna (@sunasaji) June 2, 2020
中国武漢では全員検査に踏み切り、たった10日で657万人に検査をして189人の無症状感染者を発見しています。陽性率は0.00287%で、仮に全員が偽陽性であったとしても99.997%以上の特異度があることになります。これも全員が偽陽性ではないはずで、特異度は更に高くなります。https://t.co/3D1who1g9T pic.twitter.com/HVk3XgsgqI— suna (@sunasaji) June 2, 2020
以上より、理論においても実績値においてもPCR検査の特異度は一般にきわめて高く、偽陽性もごくわずかしか出ないことがわかると思います。偽陽性が完全にゼロではないとしても、大抵の国では真陽性の心配をした方が良いでしょう。特異度99%や、ましてや90%などというのは完全にデマといえます。— suna (@sunasaji) June 2, 2020
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