2018年9月9日日曜日

(翻訳) ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』

ナオミ・クライン, 幾島幸子・村上由見子訳『ショック・ドクトリン』(岩波書店, 2011). (原著: Klein, N. (2007). The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism. Toronto, Canada: Random House of Canada.)
を読んだ。

新自由主義経済理論を打ち立てた「シカゴ学派」の政策が、混合経済を解体し中流階級の多くを失業と貧困に暴力的に陥れ、それによりごく一部の人間のみが富み栄えた、という過程を、南米各国を皮切りにポーランド「連帯」政権、和解後の南アフリカ、ソビエト連邦崩壊、アジア通貨危機、ハリケーン・カトリーナ、イラク戦争の各ケースにおいて本書は示した。1950年代北米で開発された個人への尋問術兼拷問術の中心的な思想「ショックを与えて白紙状態にする」をこの過程への比喩として用い、生産手段を国営から全て民営化に移行させ彼らにとっての「自由主義」を達成するまでの過程(理論と実装をあわせて)を「ショック・ドクトリン」と本書は呼んだ。シカゴ学派の理論を反映した政策そのものが「ショック」であるだけでなく、その政策の実施には暴力や弾圧、拷問が必ず伴うという二重の「ショック」を、それぞれのケースにおいて本書は示した。それらの暴力には米国CIAがかかわっていたという話は、明らかにこの惨事便乗型資本主義が日本語での読者にとっても他人事ではない。

このシカゴ学派というのは、シカゴ大学(当時)の経済学者ミルトン・フリードマンが理論的な主導者だったことからついた名前らしいが、やっていることは反革命活動家なのでこんなのが経済学を名乗る現状というのは大変な時代なんだなという素朴な認識を持った。

明示的には1回ぐらいしか書かれていない(と思う)が、ミルトン・フリードマン以下新自由主義者の面々がよその国に平気でこういった暴力的政策を実施できたのって、要は人種主義が根っこにあったんだわな。フリードマンから見ての南米とかCPA(連合国暫定当局)のポール・ブレマーから見てのイラクとか。

IMFと世界銀行とWTOのこれまで(2000年代まで)の立ち位置というのが邪悪すぎて受ける。シカゴ学派を卒業したエコノミストが多数流入して内部での主流派になったらしいが、こんなのが国際機関を名乗っていたのかと思うと、ほんとに国際機関は西洋列強(死語?)の帝国主義者にとって体のいい隠れ蓑やなという感じある。

この話を知った上でやるべき必要なことは、本邦でのシカゴ学派の活躍ぐあいを確認することとその阻止を試みることなんだろうね。本邦で「トリクルダウンはありまぁす」と言った政商もといレントシーカーの個人資産をまず凍結すべきなんだと思う。罪名は詐欺罪かなんか知らんし、たぶんそんな罪はないかもしれんのだけど。まあ俺が知らんだけで誰かが明らかにしてる筈なので、それを教えてくれればいいのですが。

本邦での活躍ぐあいといえば、たとえば大阪(というか維新の会)はどうなのか。たとえば大阪都構想を支持した経済学の方がいたし、直接に政策を授ける集団もいたわな。というような話をどこかで誰かが整理しているはずだと思うんだけど。俺としてはそういう悪い奴らに罰を受けさせたくてたまらん。

外国の情報機関が工作して、気に要らん政権ならクーデタしてでも引きずり倒すというやり方を見ていると本邦でも予想できることがある。たとえば今度の国会で継続審議になった水道の民営化とかああいうのを進めた後で、衆参両院で社会民主主義勢力が政権を取って再国有化しようものなら、自由民主党に武器を与えてクーデタとか、自衛隊を手引きしてクーデタだってなんだってやるということですよ。つまりは2.26事件が今度は成功するかもしれんわけです。知らんけど。

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